「世界で最も愛されている書体」と聞かれて、やっぱり真っ先に思い浮かぶのはHelvetica(ヘルベチカ)です。何だそれと思うかもしれませんが様々な所で目にしているかも知れません。いや必ず目にしています。このフォントの歴史から紐解いていきましょう!
今から68年前に開発されたフォント
ヘルベチカは1957年、スイスの活字鋳造会社ハース社でマックス・ミーディンガーとエドゥアルト・ホフマンによって開発されました。当初は「ノイエ・ハース・グロテスク(Neue Haas Grotesk)」と呼ばれ、1960年に「ヘルベチカ(Helvetica)」へ改名されました。この書体は、スイスの多言語社会や「スイススタイル(国際タイポグラフィー様式)」の影響を受け、可読性と清潔感を重視して設計されました。ラテン語で「スイスの」を意味する「Helvetica」という名称も、国際的な普遍性を意識したものです。日本では1964年の東京オリンピックを機に導入され、以降、世界中の企業や公共サインで広く使われるようになりました。

ヘルベチカを使った有名なものには、世界的企業やブランドのロゴ、公共サインなどが多数あります。代表例を挙げると、
↓日本企業の例


↓海外企業の例

中立性と万能性、説明しきれない「謎めいた魅力」
一言でまとめると「中立性と万能性、そして説明しきれない謎めいたな魅力」にあります。
01.どんなデザインにも自然になじむ「中立性」と「汎用性」があり、伝えたい内容に余計なイメージを付加しない。
02.シンプルで洗練されたラインは、幾何学的すぎず人間味が強すぎるわけでもなく、絶妙なバランスを持ちあわせている。
03.ただ文字を組むだけで「それなりにかっこよく見える」完成度の高さがあり、プロ・アマ問わず多くの人に支持されています。
04.その一方で、「なぜこれほど魅力があるのか」は説明しきれない“謎”もあり、人間のような複雑さや奥行きを感じさせる点も特徴です。
つまり、「誰にでも使いやすいのに、なぜか特別な存在感がある」。この矛盾や多面性こそが、ヘルベチカの最大の魅力。

現在もその影響力を持ち続けているフォント
普遍性と中立性の追求
スイスで「国や宗教、文化に依存しないインターナショナルな思想」を体現するために生まれました。グリッドシステムや幾何学的なレイアウトと組み合わせることで、情報伝達の明快さと客観性を実現し、現代のグラフィックデザインやUIデザインの基礎となっています。
シンプルさと機能性の重視
ヘルベチカは直線と曲線が滑らかにつながる簡潔なデザインで、可読性が高く主張しすぎないため、企業ロゴや標識、デジタルUIなど幅広い場面で「情報伝達に最適なユニバーサル書体」として使われています。
デザインの民主化
ヘルベチカは「デザインになじみのない人」でも選びやすいフォントとして普及し、プロ・アマ問わず世界中で使われることで、デザインの敷居を下げる役割も果たしました。
論争と多様性のきっかけ
あまりに一般的になったことで、逆に「避ける」デザイナーも現れ、書体選びやデザインの多様性について考えるきっかけにもなっています。

ヘルベチカは「誰もが使える」「どこでも使える」「時代を超える」ことを目指した、究極の中立性と普遍性を体現し、現代デザインの根本思想を広め、文化・国家の壁を越え、多くのシーンで用いられている。日本においても、常に日常生活に身近なところでHelveticaを目にすることができる。

現代デザインにも影響を及ぼし愛されたフォントってすごいですよね。