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文字数から見るキャッチコピー

「一瞬で伝わり印象に残る」こと

看板に使うキャッチコピーは、「一瞬で伝わり印象に残る」が最も重要です。
通行人や車のドライバーが一目で理解できることが求められるため、他の媒体よりも看板は短く、シンプルにまとめる必要があります。長いキャッチコピーは看板には向いていません。何故か?文字数からキャッチコピーを見てみましょう。

推奨される文字数の目安

一般的にキャッチコピーは25文字以内が推奨されています。しかし、25文字はあくまで「上限」であり、これを超えると認知力が下がるため「絶対に超えないように」という意味合いが強いのです。では何文字が良いか?

結論13文字!なぜ?

目を動かさずに一度に知覚できる範囲は少ない人で9文字、多い人で13文字。これが大きな理由です。これは縦書きでも横書きでもさほど差はないと言われています。

下図の25文字と13文字を比べると、13文字は一度に認識できるが25文字は目を動かさないと読めません。看板の場合、13文字以内で考えた方が良さそうですね。看板の場合と言いましたが、コピーはどんな媒体でも統一した方が良いので13文字以内を目指して考えましょう。

簡潔さと創造性が求められる

文字数制限があることは簡潔さと創造性が求められます。看板やブログのタイトルでも、限られたスペースや文字数の中で「短く、印象に残る」キャッチコピーを考えるのは簡単ではありませんが、パッと一度に知覚してもらえれば大きな強みとなります。

多くの言葉で少しを語るのではなく、

少しの言葉で多くを語りなさい               

        ピタゴラス

ここで古代ギリシャの哲学者・数学者ピタゴラスの名言。情報の本質を見極め必要な部分を的確に伝える必要性を説いています。言葉が多いと聞き手は何が重要か見失いがちです。一方で少ない言葉に多くの意味を込めることが出来れば聞き手の心に響きやすく、深い印象を残すことができます。キャッチコピーを考える上で重要なことですね。

印象に残っているコピーを集めました。

コーポレートスローガンと商品のキャッチコピーは5文字〜16文字が多数。

水と生きる|サントリーホールディングス株式会社|5文字

この言葉には、「良質な水がなければ商品が作れない」という企業の根本的な思いと、サントリーの理念「人と自然が響きあう」から派生したメッセージが込められています。また、水を生み出す自然への感謝や畏敬、水を守り育てる志と活動など、サントリーが水とともに歩む姿勢をシンプルかつ力強く表現しています。

モノより思い出|日産セレナ|7文字

このコピーが生まれた1999年背景には、バブル崩壊後の「モノ経済」から「経験経済」への価値観の転換があります。当時、働きづめで家族との時間が少なかったお父さん世代に「今こそ家族で楽しい思い出を作ろう」と呼びかける意図が込められていました。「モノより思い出。」は、単にモノ(車)を売るのではなく、その車で家族と過ごす時間や体験の価値を訴求した点で、広告業界や社会に大きなインパクトを与えました。

今日を愛する。|LION|7文字

2012年に制定。「人々の毎日に寄り添い、より良い習慣づくりを通じてサステナブルな社会に貢献する」という決意が込められています。2011年の東日本大震災を経て、「日常の大切さ」や「一瞬一瞬を大事に生きる」という社会的な気づきも、このスローガン誕生の一因とされています。

カラダに、ピース|カルピス|8文字

カルピスの乳酸菌飲料としての「体に良い」という機能面だけでなく、飲むことで心も満たされるという情緒的な価値を伝えたいという思いがありました。「ピース(peace)」という言葉には、健康や心の安らぎ、社会への貢献という願いが込められています。また、「カラダにピース」は「カルピス」と韻を踏むことで、商品名との親和性も高く、覚えやすい印象的なコピーとなっています。このようにして、機能性と情緒性、そしてブランドらしさを兼ね備えたキャッチコピーですね。

ココロも満タンに|コスモ石油|8文字

1997年に誕生。「満タン」というガソリンスタンドならではのキーワードを使い、サービスの質の良さや心の充足感を訴求する点が特徴です。また、「ココロ」と「コスモ」の語感の調和も意識され、企業ブランドと一体化した象徴的なフレーズとなっています。

お、ねだん以上。|ニトリ8文字

「お、ねだん以上。」は「お客様の期待を上回る価格設定」「お客様目線で有益な価値を追求する」という意味を持ちます。「お」という感嘆詞を加えることで、驚きや発見のニュアンスも含み、単なる「値段以上」よりも広い価値を表現しています。

インテル入ってる|Intel|8文字

「インテル、入ってる」は日本だけの特例として始まりましたが、非常に大きな反響を呼びました。その成功を受けて、インテル本社は戦略を変更し、「Intel Inside(インテル・インサイド)」というグローバル共通のブランドキャンペーンとして世界展開することになりました。

愛は食卓にある|キューピー株式会社|8文字

2007年4月から使用されています。このキャッチコピーには、食卓が単なる栄養摂取の場ではなく、家族や仲間と心を通わせ、愛情や絆を育む大切な場所であるという想いが込められています。創業者・中島董一郎が「よい商品はよい原料からしか生まれない」という信念のもと、安心・安全でおいしい商品を通じて日本の食卓を豊かにし、家族の健康と幸せを支えたいという企業姿勢が背景にあります。

そうだ 京都、行こう。|JR東海|10文字

JR東海が1993年秋から展開している京都観光キャンペーンのキャッチコピーです。このキャンペーンは、平安遷都1200年(1994年)の節目を前に、京都の魅力を全国に発信し、首都圏や中京圏から東海道新幹線を利用して京都へ観光客を誘致する目的で始まりました。「よし」といった計画的な意思表示ではなく、「そうだ」という衝動的な気持ちを表現し、「行こう」という親しみやすい呼びかけで、誰もがふと京都に行きたくなる気持ちを後押しするメッセージになっています。

はたらいて、笑おう。|パーソル|10文字

“働くこと”と“笑い(幸せや充実感)”を結びつけたメッセージです。働くことで得られるさまざまな経験や成長、仲間とのつながりを通じて、人生をより豊かにし、笑顔になれる社会を目指そうという思いが込められています。現代は働き方が多様化し、個人の価値観やライフスタイルに合わせて仕事を選ぶ時代になっています。パーソルは、そんな時代の中で“働くこと”そのものの価値を再定義し、前向きなイメージを広めたいと考えています。

どうする?GOする!|GO株式会社|10文字

「困ったらGO!」という言葉を発案し、そこからアイデアを膨らませ、「どうする?GOする!」というキャッチコピーが誕生しました。このフレーズはシンプルで覚えやすく、小さなお子さんでも口にできるため、幅広い世代にGOの便利さや「困ったときはGO」というメッセージを直感的に伝えることに成功しています。また、GO株式会社は社名変更のタイミングで「つぎの未来へGOします。」というスローガンも掲げており、ブランドの進化や社会課題への取り組みを表現しています。

URであーーーーる。|UR都市機構|10文字

2016年12月から展開している賃貸住宅事業の代表的なキャッチコピーです。このキャッチコピーは、URの賃貸住宅の認知度向上と親しみやすさを狙い、テレビCMなどで広く使用されてきました。「URであーーーーる。」のフレーズが印象的に使われ、UR賃貸住宅の特徴(礼金・仲介手数料なし等)やブランドイメージを強く訴求しています。このシリーズのCMは消費者の好感度も高く、2022年度には「消費者を動かしたCM展開」として「BRAND OF THE YEAR 2022」を受賞するなど、企業広告としても高い評価を得ています。

乾杯をもっとおいしく。|サッポロビール|11文字

サッポロビールがビールの持つ“楽しさ”や“人と人とを繋ぐ力”を強調し、ビールを飲むシーンそのものをより特別で魅力的にしたいという思いを込めたコピーです。「乾杯」は、単なる飲み物の飲み始めの合図ではなく、喜びや祝福、仲間との絆を深める瞬間です。サッポロビールは、その“乾杯”という行為自体を、さらに美味しく、そして心に残るものにしたいというメッセージをこのキャッチコピーで表現しています。

まだ、ここにない、出会い|リクルート|12文字

リクルートが提供する多様なサービスを通じて、人々が「今までに経験したことのない新しい価値や人との出会い」を体験できるという意味が込められています。求人や婚活、教育、旅行など幅広い分野で使われ、未知の可能性や新しい価値観とのつながりを象徴しています。リクルートは「新しい出会いを提供する会社」としてのイメージを確立し、利用者の好奇心やチャレンジ精神を刺激する役割も果たしています。企業理念を象徴する言葉として広く認知されています。

おしりだって洗って欲しい|TOTO|12文字

1982年にTOTOが温水洗浄便座「ウォシュレット」を発売した際に誕生した、日本を代表するキャッチコピーです当時、「おしり」という言葉はCMで使うのはタブー視されていました。タブーを乗り越え、新しい価値観を提示した歴史的なキャッチコピーです。

自分は、きっと想像以上だ。|POCARI SWEAT|13文字

このコピー前は「水よりも、ヒトの身体に近い水。」このコピーもすごく良い。当時ポカリといえばと高校生から聞き「病気のときにお母さんが買ってくるもの」という位置づけからの脱却。高校生たちに改めてポカリスエットを認知しもらうために生まれた。

やがて、いのちに変わるもの。|ミツカン|14文字

2013年から使用しているコーポレートメッセージ。それまでの「お酢の会社」というイメージから、「食を通じて人々の健康やいのちを支える企業」へと進化することを目指しました。食卓を通じて人々の健康や命を支える存在である、という強いメッセージが込められています。食材や調味料は、やがて人の体をつくり、心を豊かにし、命を支えるものになる――そんな「循環」や「つながり」を表現しています。

子どもたちに誇れるしごとを。|清水建設株式会社|14文字

2008年4月から掲げているコーポレートメッセージ。「子どもたち」は次世代や未来、そして社会からの純粋な目を象徴しており、その視線に恥じない誠実な仕事をし、未来に財産となるものを残していきたいという決意が込められています。単なる経済的価値だけでなく、理念や品格も問われる時代に、社会に対して約束し、従業員一人ひとりの行動指針とするために作られました。

こどもといっしょにどこいこうHONDAステップワゴン14文字1996年にホンダ・ステップワゴンのTVCMとして誕生しました。この広告は、家族で出かける楽しさを「モノ」ではなく「コト(体験)」として訴求し、ファミリーカー=ミニバンという新しい市場価値を提示した点が画期的でした。

何も足さない、何も引かない。|サントリー山崎|14文字

このコピーが生まれた1990年背景には、ウイスキーの製造工程で余計なものを加えず、引かず、素材と時間だけで勝負するというサントリーの哲学がありました。日本の高度経済成長期を経て、シンプルで本質を大切にする価値観が求められる時代背景とも重なり、広く共感を呼ぶフレーズとなりました。

きれいなお姉さんは好きですか?|ナショナル美容用品|15文字

1992年に女優の水野真紀(初代イメージキャラクター)を起用し、2008年まで16年も続いたCM。女性の美しさや魅力をストレートに表現し、多くの人の印象に残りました。特に「きれいなお姉さん」という言葉が持つ親しみやすさと憧れのイメージが、商品のターゲットである女性たちの共感を呼びました。背景には、当時の女性が自分の美しさに自信を持ち、積極的に輝いていくことを応援するメッセージが込められており、今でも日本の広告史に残る名コピーとして知られています。

あなたが気づけばマナーは変わる。|日本たばこ産業|16文字

2004年から展開しているマナー広告キャンペーンのキャッチコピー。このコピーが生まれた背景には、喫煙マナー向上を社会全体で促す必要性がありました。従来の「守りましょう」といった命令的な表現ではなく、「一人ひとりの気づき」が社会全体のマナーを変えていくというメッセージを込めています。喫煙者自身の自発的な気づきと行動を促すために考案されました。

ココロとカラダ、にんげんのぜんぶ|オリンパス|16文字

このコピーは「ココロはたいせつ。カラダはたいせつ。たいせつとたいせつで、にんげんはできている。ココロとカラダ、にんげんのぜんぶ。」という一連のフレーズの中にあり、人間の本質をシンプルかつ普遍的な言葉で表現しています。このコピーが生まれた背景には、オリンパスが医療技術とカメラ技術の両面で「人間のすべて」に貢献する企業であるというメッセージが込められています。単に製品の機能を伝えるのではなく、「人間の大切なものすべてを支える」という企業姿勢を端的に表現したもの。


番外:文字制限がある他の媒体

ヤフトピのタイトル文字数

特に「ヤフトピ(トピックス)」のタイトル(見出し)文字数は、2022年1月の変更以降、最大15.5文字となっています
Yahoo!ニュースの見出しは、インパクトと認識しやすさを重視しつつ、近年は内容の正確性も考慮して徐々に長くなっていますが、短い見出しは記憶に残りやすく、ユーザーの目を引きやすいという考えが根底にあります。見出しの長さは、各社のデザインやユーザー体験の設計思想によって決まっています。ブログのタイトル考える際に参考になりそう。

映画の字幕文字数 1秒4文字

1930年代の映画字幕の黎明期から変わらずに続いているルール。セリフが多くて展開の早い作品では、字数を抑えるために苦労する最大の障壁となります。動画制作のテロップで参考になりますね。

「少しの言葉で多くを語る」+13文字以内で考え、条件の中でいかに想像を膨らませるか ですね。

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